プロローグ

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立野駅南側の裏通りにある『立野第三ビル』──。 最上階である10階に『西野カウンセリングケアルーム』がある。 院長の西野透(にしのとおる)は、西野財閥の当主であり、常駐しているわけではない。 しかし、親の跡目を継いだ仕事よりも、本人が大学で学んで開業した(と言っても、その資金は親の財源からではあるが)カウンセリングの仕事の方が好きだった。 「詳しく話してみて下さい」 透の前には、妻に先立たれ、生きる希望を失っている初老の男が座っていた。 その目には生気が感じられない。 (こいつは手駒に使える) 透は澄ました仮面の裏で、会心の笑みを浮かべた。
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