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「ど、どーも……」
頭の中が真っ白になって、気の効いた事が言えなかった。
ただ、ひたすらに『葉月沙織』を演じるしかなかった。
「奇遇ですねぇ……」
「まさかね。あなた一体何者なの?」
小夜子が音もたてずに立ち上がる。
私は少しだけ後退りした。
背後にはノボルからの視線を感じている。
「『スグクル文具』の営業ですよ。まさか、伊達さんがいらっしゃるとは……」
小夜子がゆっくりと視線を外した。
何か考えているようだ。
「社長! 二階に侵入者かも」
小夜子が叫んで、ノボルはホールからの階段を掛け上がった。
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