蜻蛉の恋

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彼女の病室を訪れた すごく苦しそうで数人の看護婦が周りを取り囲んでいた 吐いていた 病室は騒然としていて 病室に入る勇気が出なかった それから、 そんな光景をいくどか見た がんばれと言えなかった 彼女の苦しみの1%すら知らぬ 僕には言えるはずがなかった 僕は、彼女に勉強を教えようかと声をかけた 「勉強なんてするだけ無駄よッ。私はもう死ぬの、ここから出れずここで死ぬんだからッ」 何も言うことはできなかった 僕の自分自身のあまりに 軽率な発言を悔いた。 僕の退院が決まった 彼女より遅く入院して 彼女より早く退院する 退院後 僕は毎日彼女の病室に通った 彼女は言った 私は駄目な人間だと 父に逃げられ、私の病気の治療費を稼ぐため必死に働いている母さんに私は八つ当たりして酷い言葉を言ったと 母さんは泣きながら 「ごめんね」と言っていたと だから、私は 罰が当たって当然なんだと ある日、 彼女は前のように星を見ていた 近づいた僕に 彼女ははしゃぐように言う。 「綺麗だね」と。 僕は、うなずき 近くに腰を下ろし 彼女と一緒に夜空を眺めた。 彼女は 夜空を見上げながら、 本当に小さな声で呟いた。 「死ぬ前までに一度は 私、流れ星見てみたい。」 「退院したら一緒に見よ…。」    何を願うの? 僕は問う。 彼女は、 「一番大事な事私考えてなかった。」 そう言って少し照れていた。 彼女は少し考えてから、 小さな小さな声で言った。 「そうだな。 …病気治して… …ううん、 …夢を… 叶えてほしいかな。」 ___
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