カモメ鳴く、エーデルカイン

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「―随分と準備に時間かかっちまったけど、これでアタシ達も旅立てるんだね!いやあ、長かった…!」 鮮やかに描かれた髑髏が印象的な青いマストの大きな船。それを眺めながら、しみじみと呟く女の姿があった。紅い髪、紅い瞳。風と共に揺れる高い位置で結われているポニーテールが似合う背の高い女は、この船の船長となる女である。 「長かったですよね、ずっと苦労してましたもの。…漸く、夢が叶うのですね。船長。」 ゆっくりと現れたのは、長い黒髪を後ろで一つに束ねている、幾分か背の低い女である。船長と呼ばれたその女が振り向いたなら、笑顔で頷いた。 「…この船は、アタシの誇りだよ。………ついて来てくれて感謝するよ。エリーゼ。」 「嫌ですわ、お礼を言わなければならないのは私の方ですよ?船長。…やっとあの“檻”から抜け出せるんです。…これ程喜ばしいことなど御座いませんわ。」 船長が礼を述べたなら気にしないでとでも言うかのように、エリーゼと呼ばれた女は首を振った。 「遂に退屈なエーデルカインとも別れの時か…二度と帰らねェって考えたら少しは寂しくもならァな。…そう思わねェかィ?船長。」 不意に二人の元に現れたのは、唐草模様のバンダナを巻いている船長よりも背の高い男。エリーゼが先に船に乗って待っていると告げれば、船長も手を振って返した。エリーゼが船に乗る様を見届けたなら、改めて男へと顔を向ける。
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