悲劇

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 大城家の使用人である田原啓介はその堀を見るたびに、先代当主の趣味の悪さにため息を漏らしたくなる。もっとも、そんなことを発言して、もし大城家の不興を買っては馬鹿らしいので口にはしないが。  そして、田原に割り振られた仕事の一つに堀の見回りがあった。その日も田原は堀の周囲を歩いていた。しかし、異常など起こるはずがないと高を括っていた。この屋敷に勤め始めてから十数年、異常など有ったためしがないのだから。
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