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〔白虎〕
うるっせえ街中を、翔くんと和と一緒に歩く。
今は食材とかの買出し中。
え?相羽ちゃんとリーダー?『聖域』に置いてきたよ。
だって、リーダーは万が一のことがあったら危ないし。相バカを連れてきたら、「唐揚げ、唐揚げ!」って五月蝿いことこのうえない。
相羽ちゃんなら、二人で留守番でもリーダーは退屈しねぇだろうし。
「お兄さん、お兄さん。この魚買っていかないかい?」
魚屋のおっさんが、嘘臭い笑顔を貼り付けて俺に言ってくる。
…うぜぇ……。
魚なんか買う予定ないし、おまえから買う気もない。
だから無視して通り過ぎようとしたら、肩を掴まれた。
「ねぇったら」
「あぁ?おまえ、うぜ……」
「スイマセンね、おじさん。コイツ俺の連れで」
え?翔くん?
「それに、もう魚買っちゃったんで足りてるんです」
和まで。……なんか、笑顔が黒い気が…。
「と、いうことで。さよなら」
翔くんが俺の手を引いて、市場から遠ざかる。
その手の力が案外強くて顔を見たら、眉間に皺が寄っていた。
ついでに和と、俺も少し。
市場の騒がしさから離れた頃、翔くんはやっと手を離してくれた。
「…マツジュン、大丈夫だった?」
「うん、大丈夫」
「まったく…ああいう奴らがいるから、地上っていうのは腐ってるんですよ」
「…だな」
さっきみたいなことは、今日だけじゃない。
さっきみたいに物を売りつけようとしたり、悪ぶってるチンピラに絡まれたり、盗賊まがいな奴や、金をとろうとしてくる奴。
そういう奴らがたくさんいるから、地上は嫌いだ。
それに、そういう奴らのせいで【アラシ国】には魔が現れてるって言っても言いすぎじゃないと俺は思ってる。
「潤くん。買出し、それで終わりですか?」
「いや、まだ少し残ってるんだ」
「そうですか。じゃあ俺がついていくんで、翔さんは戻ってていいですよ」
俺に確認をとると、和はいきなり言った。
「え?なんで俺だけ?」
「多分、今頃相羽さんが退屈し始めてますからね。なだめる人が必要でしょう?」
「だからって俺が戻らなくても…」
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