地上

2/9
前へ
/64ページ
次へ
〔白虎〕   うるっせえ街中を、翔くんと和と一緒に歩く。 今は食材とかの買出し中。 え?相羽ちゃんとリーダー?『聖域』に置いてきたよ。 だって、リーダーは万が一のことがあったら危ないし。相バカを連れてきたら、「唐揚げ、唐揚げ!」って五月蝿いことこのうえない。 相羽ちゃんなら、二人で留守番でもリーダーは退屈しねぇだろうし。 「お兄さん、お兄さん。この魚買っていかないかい?」 魚屋のおっさんが、嘘臭い笑顔を貼り付けて俺に言ってくる。   …うぜぇ……。 魚なんか買う予定ないし、おまえから買う気もない。 だから無視して通り過ぎようとしたら、肩を掴まれた。 「ねぇったら」 「あぁ?おまえ、うぜ……」 「スイマセンね、おじさん。コイツ俺の連れで」 え?翔くん? 「それに、もう魚買っちゃったんで足りてるんです」 和まで。……なんか、笑顔が黒い気が…。 「と、いうことで。さよなら」 翔くんが俺の手を引いて、市場から遠ざかる。 その手の力が案外強くて顔を見たら、眉間に皺が寄っていた。 ついでに和と、俺も少し。   市場の騒がしさから離れた頃、翔くんはやっと手を離してくれた。 「…マツジュン、大丈夫だった?」 「うん、大丈夫」 「まったく…ああいう奴らがいるから、地上っていうのは腐ってるんですよ」 「…だな」 さっきみたいなことは、今日だけじゃない。 さっきみたいに物を売りつけようとしたり、悪ぶってるチンピラに絡まれたり、盗賊まがいな奴や、金をとろうとしてくる奴。 そういう奴らがたくさんいるから、地上は嫌いだ。 それに、そういう奴らのせいで【アラシ国】には魔が現れてるって言っても言いすぎじゃないと俺は思ってる。 「潤くん。買出し、それで終わりですか?」 「いや、まだ少し残ってるんだ」 「そうですか。じゃあ俺がついていくんで、翔さんは戻ってていいですよ」 俺に確認をとると、和はいきなり言った。 「え?なんで俺だけ?」 「多分、今頃相羽さんが退屈し始めてますからね。なだめる人が必要でしょう?」 「だからって俺が戻らなくても…」 .
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加