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「俺だって戻るの嫌ですよ。面倒臭い」
「んなっ…」
「じゃあ、そういうことで。よろしくお願いしますね」
和がニッコリと微笑んだ後、翔くんの顔が少し引きつって、勝ち誇った笑みの和は俺の手を引いて歩き出した。
場所は、また市場の近く。
さっき避けたはずの騒がしさがまた戻ってきた。和はまた眉をひそめている。
「地上が嫌なら、翔くんと一緒に戻っても良かったのに」
「相バカの相手をするくらいなら、地上にいるほうが何倍もマシです」
「…なら、いいんだけどさ」
ハッキリ言うなら、俺だってこんな所嫌いだ。さっさと終わらせて帰ろう。
……っと思ってたんだけど、そうもいかないらしい。
俺らの目の前には、汚く笑う二人組みの男。盗賊のつもりなんだろうか。
買い物も全て終わって、二人で帰ろうと思ったとき。急に現れて、元々悪かった俺らの機嫌は最高潮に悪い。
「…潤くん。こいつら殺っていいですか?」
「俺も殺したいところだけど、やめておこう」
「…」
「翔くんに延々と小言を言われるのはごめんだ」
「……それも、そうですね。キャプテンにも怒られそうですし…」
すっげぇ不満そうだけど、渋々諦めてくれたらしい。
けどさ、やっぱりこのままじゃ終われねえよなあ…。
「和、俺にいい考えがあるんだけど」
口端が上がってるのがわかる。
「何ですか?」
「ちょっと耳貸して」
耳打ちしてる間に、男たちの方から何か言われたけど、綺麗に無視。
「へぇ~…それは楽しそうですね」
「だろ?」
和の顔にも意地の悪い笑みが浮かんでいる。
「オイ!テメーら何の話してんだよ!」
「早く金目のモン渡せよぉ」
しばらく放っといた所為で、すっかりキレてる二人組み。
まあまあ、今から楽しませてやっからさ。
「何笑ってやがる!なめてっマジで殺すぞ」
「まあまあ、そう焦らないで」
「そうですよ。焦らなくてもいいじゃないですか」
盗賊どもに、俺らはわざらしく涼しい顔で言ってやる。
お陰であちらさんの怒りも絶賛急上昇中。
「おにーさんたち、『神風』って知ってる?」
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