面影

4/6
前へ
/64ページ
次へ
一瞬、肩がビクっとなった。 『リーダーには黙っておこう』 これは、俺らの体の異変に気付いた時に四人で決めたこと。 百年も生きてると…っていうとじいちゃんっぽいけど…。 でも、さすがに『聖域』にいたとしても、百年も経てば体にも何にもガタがくる。 “普通の”人間みたく、寝たきりになったりヨボヨボになって死ねればよかったんだけど…。 『神風』はそうはいかない。徐々に力が弱まってきて、ある日死ぬ。 しかも、ただ死ぬんじゃない。 存在の消滅。 だから『死ぬ』ではなく『消える』といった方が正しいのかな。 ただ、幸いにも輪廻転生の輪の中には戻れるから、またこの世に生まれてくる事は出来る。 リーダーには、みんな心配かけたくなくて、ギリギリまで黙ってることにした。 少しくらい体調が悪くても、気付かれないように振舞って、必死でバレないようにした。 そしてこれも幸いなことに、リーダーは俺たちの演技には全く気付いていないみたいだった。 「俺・・・キャプテン起こしにいってきます。相羽さん、行きましょ」 「あ、うん」 急いで『羽音』を出たけど、多分それはただ時間だったからじゃない。 現に、本人は気付かれてないと思ってるけど、和の顔は少し泣きそうだった。 「…そろそろ、初雪でも降るんじゃねぇか?」 暗い空気を変えようとしたのか、外の方を見ながら翔くんがそう言った。 「あぁ…。そうだな。そういえば翔くんさぁ……ッ翔くん!」 外に向けていた視線を翔くんに戻すと、翔くんは苦しそうな表情で冷や汗を掻きながらうずくまっていた。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加