面影

5/6
前へ
/64ページ
次へ
「翔くん、翔くん!大丈夫?翔く…ッッ…っぁ……」 ヤバイ…俺ももうそろそろ限界かな…。 俺らが苦しそうにしていると、襖が開いた。 「おっはよー!みんなのアイドル、相羽ちゃんだよ~っつって☆」 「おはようございます…ッッ」 和が床でうずくまっている俺たちに気付いて、中に入りかけていたリーダーを急いで廊下に出した。 「潤くん!翔さん!大丈夫ですか?」 「あぁ…。ッ何とか、な…」 「翔ちゃんも大丈夫?苦しそうだよ…?」 「大丈夫…。治(おさ)まってきたから…ッ」 翔くんの――多分俺もだけど――顔色が少し戻ってきた。 俺の体を支えながら、和が不意に俺らに言った。 「やっぱり…もう『限界』…ですかね…」 この部屋にいる全員が目を伏せた。 「俺らの神子サマは、まだ大丈夫みたいですけどね」 薄く笑いながら、和は続ける。 「この前の魔との戦いがこたえましたね…」 誰も、何も言わなかった。でもすぐに和が立ち上がった。 「さて。いつまでもキャプテンを待たせてもいられませんし、中に入れてもいいですよね?」 「ん?あぁ」 俺が返事をすると、襖を開けた。 「おはよ。リーダー」 「聡くん、おはよう」 「あ…お、おはよ…。大丈夫、なの?」 一瞬、『限界』が近いことをリーダーにバレたかと思って、言葉に詰まったけど、すぐに翔くんが笑顔で解した。 「ん?何が?」 動揺を隠すように、俺ら四人で結界の保持に掛かった。   俺たちの『限界』が近いから。 いついなくなっても、すぐに結界がなくならないように、少しでも結界を強くしておく必要がある。   俺らの後姿を見るリーダーの垂れた眉が、いつもより垂れていることを、俺たちは気付かなかった。 .
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加