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隧道を抜けると、そこは山林だった。
時間軸は日本と似たような範囲なのだろうか。
若干薄暗い。
故郷によく似たそこは、故郷では見たことのない植物が生えている。
「無事抜けたようですね」
改めまして、と少女に向き直ると彼はゆっくりと首を垂れる。
「こちらへのご帰還、お慶び申し上げます」
「……」
何と返すべきかやや悩み、彼女は無言で頷いた。
彼は気にした様子もなく、口を開く。
「さて、あちらで何度もご説明申し上げましたが、こちらではあなた様の御身は狙われています。これからの事は分かっていますね?」
「ええ」
少女は気を引き締めながら身を正す。
「私たちは旅の商人。私と貴方は夫婦で、この子は妹。次の目的地は菴伶<アンリョウ>。貴方の母に会いに行く」
彼女の言に彼――獅操は満足そうに頷いた。
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