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「え…と、それはこっちに置いといてくれ!それはここだ。気をつけてくれよ?」
クウェイ自治区中心地から120㎞ほど離れた、フィンチと呼ばれる田舎町で銃火器店を営むビルは、商品の仕入れ業者へ陳列の指示を出していた。
「これで全部か!どうもごくろうさん!」
ビルは、業者に冷えた缶コーヒーを手渡した。業者はそれを受け取ると、一礼しトラックへ。
「…ふぅ…さてと!」
納品書の整理が残っていたので、一気に片づけてしまおうと気合いを入れた。
「よぅ!景気良さそうだなビル!」
奥に書類を取りに行こうとしたその時、聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。
「その声は…」
ビルは振り向く。と、同時に顔に笑みがこぼれた。
「はははッ!まだ生きてたのか!シン!」
ビルは、久し振りに友人に会うかのように無邪気に喜んだ。
「どうやら俺は簡単には死なないらしい」
「クククッ!そりゃ特S級のデスペラードだもんな!しばらく顔を見せないから、もしや…と思ってたんだが、要らぬ心配だったぜ!」
ビルはシンの肩を強く叩いた。
「変わんねェな…」
シンは、ビルの店を見回し、そう言った。壁にはライフルが10丁余り立てかけられ、手入れもきちんと行き届いていた。カウンターのショーケースには、ナイフや銃弾、ホルスターなど様々な備品類が整然と並べられていた。
フィンチは、ジビエ…つまり野生動物の料理が有名な町で、1つの観光産業にまでなっている。その為、こういった狩猟用のライフル等を扱う店がいくつか点在している。
しかしビルの店は他の店と違う。シンが昔からつき合いがあるのも、ビルの持つ『裏』の顔の為だ。
「実はな…、こいつを見て貰いたい」
シンは、いつも愛用している銃をビルに渡した。
「デザートイーグル……お前まだこんな化石みたいなモン使ってんのか?」
「お前から買ったのにその言い種は無いだろ」
シンは笑った。
「いつの話だよ。しかもこいつはもともと200年以上も前のやつだ。重いし、撃った後の反動もでかい。というより、未だに使えるのが奇跡みたいなもんだ。買い換え時だぜ?最近の銃はすげェぞ~…軽くてな、それでいて…」
「ビル…頼むよ」
シンはビルの話を遮り、目で訴えた。
「…わかったよ。ま、あんたのそういうトコも気に入ってるんだがな」
ビルは高笑いして、奥の部屋に招き入れた。部屋の中には、まだ修理途中の狩猟用ライフルがいくつか転がっていた。
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