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シンは銃をホルスターに差し、立ち上がる。
「そうだ…ビル、"サーマス=ロイ"って野郎に聞き覚えはないか?」
ビルはしばらく考え込んだが、首を横に振った。
「そいつが今度の『首』かい?悪いが聞いたこと無いな…。B.S.Dの閲覧権すら無い俺には、まずそういったネタは入って来ねェし…」
「…そうか」
もともと期待はしていなかったが、残念な意は隠せなかった。
「まぁ、気をつけておくよ。何か情報が入ったら、真っ先にお前に連絡するぜ」
「あぁ…ありがとう。いくらだ?」
ビルはまた首を横に振った。
「今度でいい。そのヤマが片づいてから払いに来な♪…まぁ…1つの願掛けだ。払うまで死ぬなよ?」
ビルはシンの肩を小突いた。
「普段メンテに来ないお前がふと現れるなんて、気味悪いからな…」
ビルは笑った。
「大丈夫だ。死なねェよ」
シンも笑い、おどけてみせた。
「…さて」
ここからクウェイまで3時間というところか。部屋の時計は午後6時を回っていた。
「いくのか…?」
「あぁ。今日中にクウェイの中心街に着きたいと思ってな」
ビルの肩をポン…と軽く叩き、扉へ向かうシン。スッと扉を開け、また来る…と言葉を残し去っていった。
「変わらんな…」
シンの背中が見えなくなるのを確認し、笑みを浮かべてそう呟いた。
「さて…まだやる事が残ってたな…。まぁた遅くなるぜ…」
納品書の整理を思い出したビルは、ため息をつきながら書類の山を眺めていた…。
シンがクウェイの中心街に着いたとき、時計の針はもう夜10時を回っていた。その辺のホテルにチェックインする。安いホテルだったせいか、古びた感じの部屋だった。ベッドにそのまま横になる。ー…固いベッドだ。が、シンにとっては丁度良かった。このまま眠ってしまおうかー…そう思ったが、カーテンの隙間から漏れるネオンの明かりがチカチカと五月蠅い。寝かせてくれそうもない。
「チッ……」
シンは布団を頭から被った…。疲れていたのか、眠りに落ちるのにそう時間はかからなかった。
…どれくらい時間がたっただろうか。
"何か"の違和感を感じ取り、シンは目を覚ました。
「………」
殺伐とした緊張感…。
枕元の銃を探り確認すると、そのまま目を閉じた。4~5分たっただろうか…。
ー…カチャ…。
掛けたはずの部屋の鍵が開けられた。
ギィ…
ゆっくりと扉が開く。足音が、徐々にシンの寝ているベッドに近づいてきた。
「…悪いが死んで貰う…」
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