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カチャ…
男は、シンのベッドに向け撃鉄を起こす。それは、その男の後頭部に銃口が押しつけられたのとほぼ同時だった。
「グッ…」
男は固まった。
「あんた素人か…?殺気むき出しだぜ」
今度はシンの殺気が部屋を包んだ。
「あれじゃB級のデスペラードでも気が付く…」
シンは布団をめくって見せた。シンが寝ていると思っていたベッドには、服や枕が大人1人分くらいの大きさに盛られていた。
「ククク…やりますね…。さすがは特S級…と言ったところか」
男は振り向かずそう笑った。
シンは男から銃を奪う。
「ゆっくり振り向け」
男から少し離れ、命令した。デザートイーグルは男に向けられたままだ。
男は言われたとおりにゆっくり振り向く。
顔には火傷の痕があった。顔の左半分を覆うケロイドの皮膚。黒い髪はオールバックに固められ、口元には余裕ともとれる不適な笑みを浮かべていた。
「目を覚ますにはいい顔だな」
「そりゃあどうも。こういう仕事をしていたら色々とあるもんでね…」
頬をさする男。
「何者だ…?」
シンは男に問う。
「後でゆっくり教えますよ」
男は、勝利を確信したかのようにニヤけた。シンの背中に固いものが触れる。
「動くと撃つ…」
後ろから、別の男がシンに銃を突きつけた。
「!………」
しばらくの沈黙。
「実は、"今は"あなたを殺すことが目的ではないんですよ」
火傷の男は、シンから自分の銃とデザートイーグルを奪った。
「殺気むき出しで俺の部屋に現れたのも、俺が気づきベッドを偽装したのも計算済み…ってことか」
シンは自分がはめられたことに失笑した。
「そういうことです。後ろの方にはギリギリまで殺気を消して頂きました。策は2重、3重に…ということです。」
ため息をつくシン。
「やるじゃねェか。素人ってのは撤回してやるよ」
両手を上げた。
…ーゴッ!
後ろの男がシンを殴る。…重い。
「ぐ…ぁ…!」
その場に倒れ込むシン。
「さて…」
火傷の男は、シンの前にしゃがみ込んだ。髪の毛を鷲掴みにし、顎を持ち上げる。殴られた痛みに顔を歪めるシン。それをみて更にニヤける火傷の男。左の頬が突っ張っているせいか、不気味な笑みだ。
「とりあえず一緒に来て頂けませんか?まぁ…あなたに拒否権はありませんが…」
「…そうするしか…無い様だな…へへ…」
武器を奪られたシンは、確かに言う通りにするしかなかった。
「連れていけ」
火傷の男は、シンを殴った男に命令した。
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