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ドォンッ!!!
重く鋭い銃声が響く。
「!…ぐあぁッ!!」
放たれた銃弾は、ツェンの右手に命中し、持っていた銃は弾き飛ばされた。不意に走った激痛に声をあげたツェン。一瞬何が起きたか理解できなかった。
「…!」
銃口から煙を上げていたのは、デザートイーグルだった。ツェンが撃つよりも数倍速く、シンが撃ったのだ。
「そんなバカな…貴様の銃はホテルで俺が……」
苦痛で顔を歪める。
「……!」
ツェンは、シンが車から降りる時に自分にもたれかかった事を思い出した。
「貴様あの時…!」
悔しさもあってか、かつてない形相で睨みつけた。火傷の跡が、更にそれを醜く演出する。
「やはりお前はB級だ…」
余裕の笑みを浮かべながらツェンを挑発するシン。
「さて…」
シンの銃口はサウザーに向けられた。その瞬間、警護の2人もシンに銃を向ける。部屋の扉が開き、何人か屈強な男たちが飛び込んできた。銃声を聞きつけ現れたが、その状況に身動きがとれなかった。
「動くなよ。動いたらあんたらのボスの脳がブチ撒けられる事になる」
銃口はサウザーの額に当てられていた。
「どういう事だツェン…!」
サウザーは、怒りに満ちた声で問う。ツェンは何も答えることが出来ない。あまりに一瞬の出来事で、サウザーにも回避する暇さえ無かった。
「帰るまでちょっと付き合ってくんねェか?」
シンは、屈託の無い笑みでサウザーに語りかけた。
「心配すんな…帰るまでの保険だ。殺しゃしねェよ。頃合いを見て帰してやる。」
周りの男たちはたじろぐ。
「貴様…もう遅いぞ…!これで貴様はファングを敵に回したことになる!長生きは出来ん…!」
サウザーは歯がゆさを押さえきれない。ここまで舐められたのは、人生で初めての事だった。
「もともとそんなつもりは無ェよ…」
目で合図し、サウザーを立たせる。
「悪いな。パパが帰るまでお前等はお留守番だ」
サウザーを先に立たせ、部屋をでる。
誰も手出し出来なかった。
ー…外。さっき乗ってきた車がまだ玄関にあった。
「運転しろ」
サウザーを運転席に乗せる。シンは助手席のドアに手を掛けた。
「シンッ!必ず!必ず私の手で殺してやる!」
叫ぶツェン。シンは、聞こえてはいたがそれを無視し、車に乗り込んだ。車はゆっくりと進む。立派な門をくぐると、またクウェイに向け走り出した。
「まさかあんたらが絡んでるとはな…」
シンは楽しそうにそう呟いたー……。
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