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中には小さな瓶がたくさん入っていた。瓶の中には何も入っていない様に見える。
「…やはりな。ゼノか…」
ゼノとは、最新の麻薬で、気体麻薬と呼ばれるものだ。無色透明の気体なのだが、ほんの微量一吸いでトリップできるすぐれもので、30㏄程のこの瓶でも二ヶ月は持つ。一瓶あたり300~400万ガルはする代物だ。
「な…なぁ、その瓶、全部あんたにやるから、見逃してくれねぇか?」
ケビンはすがる思いでシンに懇願した…が、シンは軽くため息をついて首を横に振った。
「悪いが、そういう稼ぎ方には興味無いんだ」
諦めろ…と、目でいなした。
ー……バタン!
シンは後ろの物音に振り返る。勝手口のドアが揺れていた。ローパーの姿も見あたらなかった。ケビンと話している隙に逃げ出したのだ。
「あ~…知らねェぞ…。大人しくしてりゃあいいのに…」
ケビンは、シンがそう呟いた意味がわからなかった。直後ー…
ー…ゴッ!ゴン!!ガァァン!!!
と、コンクリートを金属で殴るような音が三回ほど響いた後、ズルズルズル…と何かを引きずるような音。
「よう!」
勝手口から顔を出したのは、綺麗な銀髪…しかし年は30代と若い感じの、無精髭を生やした男だった。右手には、失神したローパーが滑稽にうなだれていた。髪の毛を鷲掴みにして、引きずってきた様だ。
「殺してねェだろうなダン!死んじまったら賞金パーだぜ?」
ダンと呼ばれたその男は、大丈夫だ…と軽く笑って見せた。
「言っただろ?ここがこいつらの巣だって。裏口で張ってて正解だったぜ」
ダンはシンにそう言うと、失神したローパーをケビンの前に放り投げた。顎が砕け、泡を吹き、白目を剥いていたが、かろうじて息はしていた。
「こうなりたくなけりゃ、おとなしく迎えをまってるんだな」
シンはケビンに忠告した。ケビンは恐怖からくる脱力で、身動きをとることが出来なかった。
20分ほどで、管轄の警官が店に現れた。
「ご協力、有り難う御座いました!」
ダンは、2人を半ば無理矢理引き渡した後、懐からカードを出して警官に渡した。
「あぁ、精算ですね。少々お待ち下さい」
警官は、パトカーからカード認証の機械を持ってきてそのカードを差し込んだ。
『ピピピ……デスペラード登録認証確認…』
無機質な声が響く。
『270万ガル送金……………完了イタシマシタ』
シンは煙草に火をつけ、お疲れ様…とダンの肩を叩いた。
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