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その時、スーツで決めた男が二人に近づいてきた。それに気付いた警官が改まり、敬礼をする。
「お前達特S級のデスペラードが雑魚相手とは珍しいな」
「よォ!リーか!」
シンは、スーツで決めた男リーに景気良く挨拶した。
「なぁに、小遣い稼ぎだよ」
ダンは煙草に火を付けながら答える。
「君、ここはもういい。帰りたまえ」
「はッ!失礼致します!」
リーは先ほどの警官に帰還を促した。警官はシンとダンにも一礼し、ケビンとローパーを連れて引き上げていった。
リーも煙草に火を付ける。
「お前こそ何でこんなとこにいるんだよ。」
シンがリーに問う。
「どうやら公安特捜の指揮官ってのは暇らしい」
ダンは笑いながらおどけてみせた。リーも笑う。
「そんなんじゃない。むしろ忙しい過ぎる位さ…特に最近はな…」
「…ゼノか?」
「あぁ…」
公安特捜課とは、麻薬・殺人・テロなどのデカいヤマを総括して捜査する部署で、その手のエリートが集まるいわば対犯罪のエキスパート集団だ。そのトップとしてリーが選抜され、5年前に立ち上げられた。その功績もまたすばらしく、ここ1年で4つの指定テロ組織、6つの麻薬組織・工場・ルートを暴き、壊滅させた。
しかし、半年前に新型麻薬『ゼノ』が現れた。無臭・無色で、発見することは難しい。先ほどの雑魚2人に関しても、親組織すら知らされていないのが定石だ。ひどいものになると、自分が何を運んで、何を捌いているのかすら分かっていない連中だっている。
「今日ここでお前等と会ったのは偶然だ。実は俺もローパーに目を付けていてな」
リーは先を越された…と、苦笑いした。
「なら早く踏み込めばいいじゃねェか。俺らの喰いっぷちが減るのはいただけねェが…」
ダンは、笑いながらそう茶化した。シンも笑った。
「あぁ、そうしたいのは山々なんだが…うちら公務員ってのは色々書類が必要でね…。上役への印鑑回しだけでも二ヶ月はかかる…ふざけてるぜ…」
リーは今の組織体制に憤慨の意を隠せなかった。それを見たシンはリーの肩をポンと叩く。
「その為に俺達デスペラードがいるんじゃねェか」
ダンも頷く。
「俺達ゃ金が入りゃあ問題ねェ!」
ダンの馬鹿笑いが夜の町に響いた。
「過去にも何度かお前達に借りをつくっちまってるしな…」
リーはふがいなさそうに答えた。
「その分お前等警察の特別会計予算からたんまり戴いてる。それでチャラだぜ」
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