690人が本棚に入れています
本棚に追加
「クウェイ自治区のリンクに飛んで、サーマスって野郎を見てみな」
ダンがニヤニヤしているのを不快には感じたが、気にせず言う通りに見てみることにした。
「サーマス=ロイ……」
やや黒みを帯びた肌と目、髪も黒く、冷たい感じの男だった。賞金額は……
「1200万!?」
ダンも喜んでいた。久々の大物だ。
「………まてよ…」
シンはある事に気づいた。ダンもそれに早く触れて欲しかったらしく、満足げに煙草に火をつけた。
「窃盗…?」
シンは怪訝な顔でダンを見た。
「俺もそこが気になってな…。1200万ガルもの大金がかけられちゃいるが、危険度もA~Fの6段階のうち"E"と低い。昨日の奴らと変わらん。罪名も窃盗と、まぁかわいいもんだ…」
「にもかかわらず…金額は"B"クラスの首同等…か…」
シンの口元に笑みがこぼれた。こいつは裏に何かある…そう思えたからだ。ダンはその笑みを見て、面白そうだろ…とシンの肩を叩いた。
「もし本当に"E"クラスなら楽に大金稼げるし、そうじゃなけりゃあ…それはそれで楽しめるってもんだ」
2人は地下に降りた。アパートの一室を買い取り、勝手に作った地下室を武器庫代わりにしている。中は無造作に銃が置かれていた。そこからそれぞれ銃を選び、ホルスターへ差す。…といっても、いつも使う銃は決まっているのだがー…。
防弾チョッキを着込み、マガジンをいくつか収納できるジャケットを羽織る。ダンは自慢の銀髪にクシを通していた。無精髭はそのままだ。シンはダンの後ろから鏡を使い、長い髪を束ねる。
「髪…切らねェのか…?」
ダンがシンに問う。
「染めねェのか?黒に…」
お互いほっとけと、鼻で笑った。
シンはイスに腰掛け、銃を眺める。
「さて…」
ダンも準備が整ったようだ。
「クウェイ自治区まで二日ってところか…」
シンが呟く。
「俺はクウェイ自治区に行く前に、ザザ自治区にいってみる」
ダンは壁により掛かりそう言った。
「ザザ?また遠いな…」
「あぁ。ゾットの爺さんとこだ」
ゾットとは、ダンがシンとコンビを組む前から知っている情報屋だ。もう70歳近いのではないだろうか。
「あぁ、ゾット…。しかしあのジジィ、役に立つのか?」
「意外とマニアなネタ持ってんだよ」
ダンは笑った。
「クウェイにはいつ来る?」
「まぁ…1週間…てとこだな」
壁から離れ、煙草に火をつけると、重くくゆる煙を深く吐いた。
最初のコメントを投稿しよう!