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「行くのか…?」
シンは、眺めていた銃をまたホルスターに戻し、ダンを見る。
「あぁ」
ダンはシンに答えると、階段に向かった。
「ダン!」
シンがダンを呼び止める。
「あぁ?」
「一人で暴れんなよ。お前の悪い癖だ。加減を知らん」
ダンは笑った。
「お前に言われたか無ェぜ、シン!クウェイ自治区も治安が悪い。キレたら手が着けられないのはお前の方だからな!」
シンも鼻で笑った。ダンは階段を登り、見えなくなった。軽快な足音だけが響く。シンは腕時計を見た。
「ー…3時…か…」
まだ少し酔いの残る頭を掻き、立ち上がる。
「さぁて…俺も行くかな…!」
軽く伸びをして一息つくと、階段を一気にかけあがり、シンもまた部屋を出た。間もなく、街の雑踏の中にとけ込み、クウェイに向け自らその一部と化した。
少しの硝薬の匂いと、少しの煙草、そして少しの酒の香りが混ざった部屋は、2人の帰りを待つかのように、いつも通り静かに佇む。ただ、壁に掛かった時計の音だけが、チクタク…チクタク……と、微かに響いていたー……。
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