一章 思い出

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何かを決心したかのようにマイスは言葉を続ける。 「僕と結婚する事は……怖くありませんでしたか?」 ずっと、気にかけていた事。 聞こうと思えばいつでも聞けた事。 だが、怖くて聞けなかった事。 「………怖かった。」 少しの沈黙の後、目を伏せながら小さな声で言った。 「………そう……ですよね…。」 自分の中に……マイスの中に流れる血は、人間としてのそれだけでは無い。 異形の者の血。 いくら可愛らしいモコモコの血で在ったとしても、人で為らざる者、モンスターの血………だ。 怖くないはずが……無い。 覚悟はしていた事だ。 だがやはりその事実は重い。
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