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この日俺はいつも通り盗みを働こうとしていた。
使い慣れたマイナスドライバーにバールに軍手に懐中電灯……
コイツラはモノ言わぬ俺のパートナーだった。
腕に付けた時計を見たら短い針は3を指し狂い無く時を刻んでいた。
『寝てたのか……』
最近疲れている為か二時間程寝ていたらしい。
何故こんなに疲れているのか理由は簡単だ。
家出中だから。
………いや
正確に言えばホームレスだから。
『……さて、行こぅかいの…』
重い腰を上げ俺はパートナー達を服に上手くしまい寝床を離れた。
寝床と言っても実際は、廃店舗の二階に俺は無断で住んでいた。
いろいろ盗みを繰り返す内に見つけた我が城だ。
腐ったドアを開け外に出た途端……冷たい風が体に吹き付けた。
『どうりで寒い訳じゃ…』
いつもの寝床で寝ていたら、いつの間にか雨が降り出していた。
いつもならこんな日に盗みはしない。
雨降りの深夜に徘廻するのは、傍目から見て怪しいからだ。
しかし今日は勝手が違う……
手元の残金は500円……
嫌が応にも盗みに行かなければ金が無い空腹を満たせない。
『たいぎいのぉ!(めんどくさい)』
俺は面倒臭がりながらも渋々盗みを働く事にした。
まだ小雨という事もあり、俺は傘もささず愛煙しているマルボロに火をつけ目星をつけていた店に向かって歩き始めた。
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