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【妹】
懲役になり何日かが過ぎた。
俺は意味が分からない作業をやらされて苛々していた。
目の前の受け皿には8種類程のビーズが混ざった状態で散乱しキラキラ光っている。
足元には小袋がこれまた8袋……デカイ袋には混ざったビーズがパンパンに詰まっている。
刑務官曰く『この混ざったビーズを色ごとに分けて小袋に詰めてくれ』との事らしい。
だから俺は素直に
『赤ぁ赤ぁ赤ぁ赤ぁ………』と赤いビーズばかりシャーペンを使ってより分けて袋に詰めていた。
ハッキリ言おう。飽きた。
最初は楽しかった……うん楽しかった………けど8月で冷房さえ無い部屋でウチワパタパタさえ出来ないこんな状況で細かい作業してたら苛々もする。
しかもこの使い古した袋を見る限りより分けたビーズをまた混ぜてループさせているみたいだ。
『アホクサ…』
コレを一日8時間……人をノイローゼにさせる気か。
全くもって楽しくない。
つか蝉煩いし。
『はぁ~………飯まだかな。』
刑務所には懲役からは見えない位置に時計をつけるため懲役は体内時計に頼るしかない。
『いつ刑務所あがるんだろ俺……』
悩みはソコにつきる。早く移管したい。それしか頭に無い。
『47番中島ぁ………手紙』俺は耳を疑った。
俺は移管が無い限り刑務官に話しかけられる事が無いと思っていたからだ。
俺は指印し手紙を受け取った。
手紙には※桜の判子が押してあり桜の真ん中には閲と書いてあった。
名前を見たら…妹だった。
何故今更手紙?
てか来るの遅くねぇ?
とりあえず読んでみる。
Dear→みゅうKへ
久しぶりじゃね🎵元気しとるん?今、21じゃろ?成人式は行ったん?ΟΟは今年の5月で18になったョ‼
~中略~
親は頼れん状態じゃけど一人っ子じゃないんじゃけん★キョーダイがおるけんね🎵
返事ちょーだい😃 ΟΟ
…………………俺は泣いていた。
嬉しさで泣いたのは初めてだった……
俺は忘れていた妹の事を…
仲が良くていつも俺に煙草臭いとカバチ垂れてた妹の顔が……悪がきみたいな笑いかたしか出来ない妹の顔が俺の心を揺さぶった。
俺は手紙を大事にしまい二度と人生を踏み外すまいと心から思った。妹のためにも。そして何より自分のために。
そしてまた俺はくだらない作業に取り掛かった。
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