俺たちの戦いはこれからだ

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 あの時の恭平の反応と言ったら、凄かったからな。こっちが引くくらいに。 『……お、おい、昴。お前、こんな貴重なブツどうやって手に入れたんだ!? こ、これ、あのアイドルがデビュー前に撮ったお宝の。っておい、こっちはまさか噂だけで実在するかも疑われていた幻の映画じゃねえかっ!』  そう。今やあいつは俺に付き従うだけのエロ奴隷。  ついでに女の扱いにはそれなりに手慣れている薄汚い豚野郎でもある。  流行や女性受けする情報なんかにも詳しく、わざわざ女の前ではキャラまで作ってやがる徹底振りには呆れを通り越して感心してしまうほどだ。  おまけにあの外見である。他人の内面を見抜ける才能でも持ってる人間でなけりゃ、騙されるなと言う方が難しいだろう。 「あ、ねえねえ三島さん。僕、今日のお昼は学食で済ませようと思ってるんだけど、よかったら一緒に食べよう?」  “表と裏”のスイッチを一瞬にして切り替え、迫って来ていた女子たちに自然な態度で話しかける恭平。  毎度のことながら、すげえ変わり身の早さだ。  本性を知っている俺としては何が『僕』だ気色悪いと鳥肌ものの不自然さだが、哀れにも声をかけられた女子集団は嬉しそうに立ち話を始めてしまった。  よし、恭平がうまく足止めしてくれている間に、俺は目標物をいただくとしよう。  そこかしこから伸びてくる無数の腕をかいくぐり、足を踏みつけられないよう下方にも気を配りつつ、俺は素早く手を突きだし、一つ、二つ、三── 「……っ!?」  三つ目、最後の一つであるチョコレートプリンを手にしかけたところで邪魔が入った。  突如横から伸びてきた手が、俺の掴みかけたプリン容器を無情にも奪い去って行ったのだ。  しまった……! 「ん? ……何だ?」  俺の視線に気づいたチョコプリン強奪犯が怪訝そうに表情を歪ませた。  男らしい屈強な肉体に、精悍な顔つき。誰かと思えば、こいつ去年同じクラスだった奴だ。  名前は確か──柳沢。  下の名前までは残念ながら覚えていない。 「夜空か。何か用か?」  どうやら向こうも俺のことを覚えてくれていたらしい。汗臭い筋肉男の記憶に残っていても、まったく嬉しくはないが。 「ああ、いや……」  とりあえず交渉してみるべく、俺は口を開いた。  と言っても、俺別にこいつと仲良かったわけでもないしなあ。何が好みだとか趣味は何だとか一つとして知らんぞ。
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