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貸していた金をすべて踏み倒され、今じゃ倒した奴らに紹介された金貸しから追い込みをかけられている鶏。ベニス在住のアントニオに続き、ミイラになったミイラ取りの気分も少しだけわかった気がした。
呪詛を口にしながら携帯を開く ―― 不在着信の嵐と未読メールの山。どっちもほとんどミイラ取りからのものだった。
ロクでもないコンタクトは無視することに決め、代わりにミクシィへログイン。
メールアドレスまたはパスワードが正しくありません ―― もう一度。
メールアドレスまたはパスワードが正しくありません ―― 更にもう一度。
メールアドレスまたはパスワードが正しくありません ―― おそらくは強制退会。他人のコメント欄を荒らしまくり、事務局の警告を悉く無視しまくった代償か。なんとも絶妙なタイミングで心を荒ませてくれる。
携帯を折り畳む ―― 着信。金ならねえぞ、と言いながらオープンボタンをプッシュ。ディスプレイには不倫の関係にある女の名前が浮かび上がっている。
「金の切れ目がなんとかってやつね、じゃ」女はそれだけ言うと一方的に電話を切った。呆けているとじきにまた着信 ―― 見知らぬ番号。
※$☆@#%&!!! ―― さっきの女の亭主からだった。慰謝料請求訴訟を起こす、との由。ああ、そうかい。頑張れよ ―― 電話を切った。間髪入れずに着信。
鶏は白いヴェールに覆われ始めたアスファルトに携帯を叩きつけた。
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