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 踵で念入りに携帯を踏み拉きながらタバコを口に挿んだ。使い捨てライターの炎が予想外の高さまで伸びてきてチリッと前髪を焼かれる。仰け反ると同時に雪に足を取られてバランスを崩した ―― みっともない動作で空を切る手足。  転ぶまいと必死に背泳ぎのような格好で踊るも、その甲斐なく路面に尻を突く。  強か腰を打ち、すぐに立ち上がれないでいると後ろでダンッダンッ、という音がした。そのままの体勢で音が聞こえた方向へ身体を捩る。  土砂を山盛り積んだダンプに轢殺された残骸 ―― 鶏の財布。  這うようにしてそれに近づき、恐る恐る中を開く ―― カードの類と護符がすべて割れるか折れるかしていた。
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