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「今日の授業は終わり。各自レポートにまとめて提出。解散。」
終わりの鐘が聞こえた時、約二階あたりに相当する高さを持つ大きな岩の上に私は居た。雑談をしながら教室へとばらばらと帰っていく生徒たちを見送ってからスカートの埃をパンパンとはたいてしゃがみこむ。馬鹿みたいに天気が良かったはずなのに、もう茜色になっていた。
「…結構、高いなぁ……」
あまり言うことではないが、高いところがあまり得意ではない。さらに恥ずかしながら、戦闘になるとうっかりこんなところにいるということが多々あった。飛び降りることは出来る。着地だってできる。わかっているのだ。しかし躊躇してしまう。
「もう誰も来ないだろうし…自力、しかないね。」
そのままお尻をおろして膝を抱えると、膝に額を当てて逃げてみる。
「怖いもんは怖いんだってば」
「大丈夫ですか?」
返事を期待していなかった呟きに、地上から返事が来て、私は顔をあげた。
そっと下を覗きこめば、いまだ笑顔以外に見たことのない教え子の顔だった。
笑顔の愛される、戦闘と縁が無さそうな…というより、縁があってほしくない彼の顔を見たら、何故だか力が抜けた。
「……だいじょ…」
「大丈夫なら、降りれますよね?」
「っ……」
こいつ、独り言を全部聞いていたんだろうか?生徒の誰にも言ったことのない弱点だったのに
「……降ろして、くれ」
たっぷり時間をかけて言ったその言葉に、彼が、ちはや=アルセイフが、少し笑ったような気がした。
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