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「これは酷い・・・」
もはや、この焼け焦げた村には人っ子一人いないだろう。
つい先ほどまで、この村は轟音鳴り響く戦場であった。
村人達はなすすべもなく、敵兵からも自国の軍からも"障害物"としか認識されていなかったのだろう。
まさしく、今のこの惨劇がその事を物語る。
「エルドラ様!」
顔だけで振り向くと、見知った自分の兵士がいる。
「エルドラ様、ご報告です。」
「・・・生存者は?」
「残念ですが・・・。」
「そうか・・・。」
わかってた。わかっていたんだ。自分達が、"騎士"が、銃を使う戦場においていかに無力か。
それでも、誰かの役に立ちたかった。
無力ではない、それを"微力"でも証明したかった。
「そうか・・・。」
もう一度呟く
悔しさで歯が軋む、怒りで拳を握る、悲しみのあまり目を閉じる。
怒りと悲しみと後悔を押さえつけ、私は部下に撤退命令を下そうとした。
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