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放課後
体育館に透はいた。
竹刀を握り相手と向かい合う。
「はじめ」
眼差しは真剣で相手の隙を狙う。
何度かぶつかり合う音を響かせた後、透は一本を決めた。
「一本!」
その瞬間、透は視線を感じそこを見る。部員の視線ではなくそれは一人の教師のモノだった。
宮瀬和斗。
透は気にせずまた視線を元に戻した。
そんな透に宮瀬はにっこりと笑うと体育館をあとにした。
部活が終わり透は美術室へと向かう。
そこには真剣な表情でキャンパスを見つめる章吾が一人でいた。
何も言わずに透は章吾の後ろに立ち絵を見つめた。
「おつかれ透」
「…あぁ。居残り?」
「少し納得いかない所があってさ…残ってた」
「そうか。…綺麗だな。お前の絵は」
「サンキュ。あっ、あと少しで終わるし、一緒に帰ろ」
「わかった」
透は章吾を羨ましく思っていた。
自分の感情を何らかの形で伝えられる事を。
声だけじゃなく、絵にも現れている。章吾は無意識かもしれないけど…。
「すごいな…」
「何が?」
「別に」
「なんだよ、それ」
章吾は透に振り返らず笑って言った。
数10分たった後、章吾と透は美術室をあとにしていた。
二人で歩いていると
「おっ、今帰りか?」
松山が声をかけてきた。
「げっ、松山」
章吾は明らかに嫌そうな顔をする。
「明らかに嫌そうな顔すんなよ章吾」
「名前で呼ぶな!」
「別にいいだろ~。あっ松崎、お前明日、書類だせよ。ちゃんと」
「はい。わかりました」
「頼むな。じゃあな松崎」
「俺は無視かよ」
「かまってほしいのか?章吾」
「ちげぇよ!」
「ふっ…可愛いな」
笑いながら言う松山に章吾は赤くなりながら無視をし歩きだした。
そんな章吾を見て透は松山に会釈すると章吾を追った。
追いつき二人で並ぶ。
「章吾ってさ、松山嫌いだって言ってるけど…ほんとは」
「好きなわけねぇだろ!あいつの事なんか」
「…誰も好きなのかなんて聞いてないけど」
「……」
「好きなんだ?」
「好きなわけねぇだろ!いつも俺の事かまってくるし本当うざい」
「…ふーん」
透はそう言いつつ赤くなってる事を章吾に伏せた。
「あっそれより、お前、またフッたんだって?確か一年の可愛い子だって聞いたけど」
「男に可愛いもないだろ」
「そう言うと思った」
章吾は笑って言う。その顔は可愛い。他の男子いや女子も虜にしていただろう…。が透は何も感じてはいなかった。
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