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(ここは何処だろう?僕は何をしてるんだろう?)
「…ッ!…ルッ!…ハルッ!ハルッ!」
(誰だろう?僕を呼んでいる…)
ポタッポタッと何か冷たい雫が僕の顔に落ちる。
(雨かな?そういえば僕が初めてママと会ったのも雨の日だったな…まだ産まれて間もなかった僕に傘を差し出してくれたママ。ん?雨にしては何か暖かい気がするな…あれ?僕は何をしていたんだっけ?っ!妹は?僕の妹は?)
僕は重たい目を必死になって開く。
そこには…僕を抱き抱えて大粒の涙を流しながら僕の名前を呼び続けるママ。そして、ママの横で泣きながら僕の名前を呼ぶ妹。
(そっか…無事だったんだ。よかった。突き飛ばしちゃってごめんな。痛かったろ?でも、泣いてばっかりじゃダメだぞ?もうすぐお姉ちゃんになるんだから)
僕の声にならない言葉が聞こえたのか?妹は泣きながらコクンと頷く。
それを見た僕は今度はママの方を見る。
やっぱりまだ大粒の涙を流すママの顔に僕は重たい頭を上げて涙をペロっとなめる。
(ママ…泣かないで。どこか痛いの?ママが泣いてると僕まで悲しくなるよ。なんだか懐かしいな…僕が小さかった頃はよく抱っこしてもらって一緒に寝てたよね。あれ?少し目が霞むや…)
僕は自分の身体を確認するように目を向ける。
酷いものだった。
(脚は変な方向に曲がってるし血まみれだ…そっか…僕はもうダメなんだ…)
僕は自分の身体から目を背けてまたママと妹の方を見て…にっこりと笑う。
(ママ…ありがとう。ママと一緒にいれて僕は幸せでした。僕はママや妹とは違うけれど、ちゃんとお兄ちゃんを出来てたよね?こんな僕だけど、僕を「お兄ちゃん」と呼んでくれますか?)
~fin~
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