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結音が呼ぶ声で、ハッと永遠は混乱した頭から我にかえる。
永遠は反射的に辺りを見回した。
小さな木造の教室。
二つしかない机。
存在感の大きな黒板。
また別の意味で見慣れたここは間違いなく教室だった。
さっきまで自分の家、結音の部屋にいたと言うのに、と永遠は首を傾げる。
その永遠を結音は不思議そうに見て、そして「ん」と両手を伸ばした。
「ありがと。卵ちょーだい」
と随分つっけんどんに。
結音はきっと意識していないし悪気もないだろうが、ちょっとだけ永遠はカチンと来る。
だから思わず卵を抱く腕を強めて結音に「べー」と舌を見せた。
すると今度は結音がカチンと来る番になる。
「返して」
「やだ」
「うちの子返して、誘拐魔」
「もう母親気取り!? 早くね?」
「だって手紙に拾った人に親権がって書いてたじゃん! いーから返してよ!」
軽い気持ちでやったからかいは、結音には遊びにはならず、段々と表情に表す怒りが形を出して永遠に向かう。
やばい、からかいすぎた。
そう思ったのと永遠が結音に卵を返したのは全く同じタイミングだった。
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