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 緑色の髪の先輩、小日向 千冬。  同じく緑色の髪の先輩、氷室 千榛。  漫才コンビのような二人は顔が全く同じ。  身長も体重も、声音だって同じ。  ここまで来ると双子じゃないのかと疑いたくもなるが、残念ながら血縁関係はない。  生き別れの双子説はすっぱりと否定されたのはまだ記憶に新しい。  見分けるのが難しいと思われたが、幸い性格が全く違うから見分けるのがそう苦にはならない。  大雑把に言ってしまえば、千冬がボケで千榛がツッコミと言ったところ。  たまに逆転するときがあるが、静と動なのでやっぱりわかりやすい。 「通報!? 通報ってあれか! 警察か!」 「んなわけないじゃん。警察に失礼だしそんな手間かかせることさせらんない」 「んじゃどこにさ?」  箸を右手に椅子の上に立ち上がる千冬をちらりと見上げて、そしてあきれて目を反らした後に千榛は言った。  水筒のコップを両手で包んで。 「保健所」  と。 「……ほ、けん……? じょ……―――貴様千榛ぅうううぅぅう!」  僅かの間で言葉の意味を把握し、騒ぎ始める千冬。  しかしそれを華麗なまでに無視して千榛はお茶を啜った。
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