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しかも嫌みのごとく普段は千冬を突き放しているはずの千榛がパンッと千冬と手を合わせている。
必要な協調性はないくせに、いらない協調性は持ってるんだな、と永遠は内心で千榛をぶん殴ってみた。
そう、あくまでも心の中だけで。
だって実際にはそんな勇気ないもん。
「親父にも殴られたことないのに」
「心の中読まれた!? ごめんなさいごめんなさい!」
ポツリと言った千榛の言葉に永遠は律儀にツッコミを入れたあと、速攻で頭を深々と下げて謝った。
それを見た千榛がふっと勝ち誇ったように笑ったのは気のせいだろうか。
そんなことを考えようとして
「ああああああああ! 欠けたっ! 卵が欠けたっ!」
結音の声に引き戻された。
永遠は「あ」と短く声を発した後、反射的に結音に向く。
見ればカタカタと動く卵相手にひどく慌てている結音がいた。
卵の様子は欠けた欠けたと結音が騒ぐ通りにいくつか穴が空いていて今まさに孵るであろうことを告げていた。
結音は卵を両手にしっかりと持ったまま慌てながらも目をそらさない。
卵の動きが段々と大きくなる。
カタカタ
カタカタカタ
カタカタカタカタ
―――パリ
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