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 やや大きめな人形サイズの卵。  それをホクホクと嬉しそうに抱く結音を止めるのは至難の技であることを永遠は知っていた。  きっと結音は意地でもこの卵を育てる、と永遠は確信した。  こうなれば結音に協力するか戦争を仕掛けるかしかないのだが、戦争すると永遠は絶対に負ける。  永遠は再び重いため息をついた。 「……温めたら、孵るんだよな」  そして折れたのは永遠の方だった。 「――で、君らはいつまで先生を無視するんですか?」 「ぉわわああっ!」  不意に現れた穏やかな声音に結音と永遠は飛び上がった。  反射的に声のした方を見ると、教壇に顎をのせてニコニコと笑っている守崎兄妹の担任、桜橙の姿があった。  因みに桜橙に名字はない。  と言うか双子は気にしていない。  先に言葉を発したのは結音だった。 「あーびっくりしたー…なんだ。桜ちゃんかー」  桜橙、通称「桜ちゃん」と呼ばれる彼は眼鏡ごしににっこりと笑った。
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