女王の、誕生。

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  ぼー、っとした視線の先にあるグラウンドには誰もいない。 授業中ではあるが、今日のこの時間にはどのクラスも使っていないようだった。 ……その方が好都合ではあったのだが。 誰かに見つかって騒ぎになるのは本望ではない。 ただひっそりと、消えようと思った。 揃えられた革靴(ロウファ)を見、その上に遺書めいた文を残した携帯電話を置く。 そして、眼下に広がるコンクリートを見た。 20メートル、というところだろうか。 “死ぬ”には充分だった。 ……そう、“死”。 オレはそれに憧れもしない。 ただ “生きていたくも”ないから。 だからオレは死ぬ。 その意味のない生活(ままごと)に終止符をうつのだ。
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