女王の、誕生。

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   すう、っと息をすう。 そして、倍の時間をかけて吐き出す。 ……はあ。 よし、これで……。 その時、背後からガチャ…、と音がした。 それでもオレは振り返らなかった。 もう決心は揺らがないと思っていたから。 ……どうせすぐ飛ぶんだ。教師を呼ぶヒマもなくすぐに…… 「ねぇ、そこの人」 「………」 思わず返事をしてしまいそうになった。が、違う。 オレはここから…… 「聞いてる?そこの髪の長い人」 チラリと声の方を振りかえる。 オレの知り合い…、ではなかった。それ以前に見たことのない顔だった。 ……誰だあのメガネ男は? 「何か?」 出来る限り平静な、拒絶する冷たい声を出して、その侵入者を見据える。 すると相手が息を呑むのがわかった。…というより絶句、なのか。そんな顔だった。 そして急に口を開く。 「い、伊藤静さんが声をあてていそうな人ですか?」 …………。 「初対面の人間に意味不明なことを聞くのが貴様の趣味なのか?」
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