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「バカって言うな」
脅すように睨み付けて初めてわかったのは、そこに立っていたヤツが、ただの制服じゃなく真っ黒な白衣を着ていたことと、左右非対称な笑みを浮かべていることだった。
「もしかしてバカって言われ慣れてないクチ?
嗚呼、成る程。“生きている理由が見つからない”なんて、ちょっと頭の良いバカに多い思春期特有の考えだ」
「…………」
自己の存在意義が確立出来ない、見つけられないってとこでしょ?
と、ヤツは言う。
オレは無言で眼力を強くする。
というのも、
言い当てられたからだ。オレの内面が。
俺が内面に抱え込んでいた真剣な考えを“バカ”の一言で切り捨てられたからだ。
「何の、権利があってオレをバカと言う?」
あああああ、違う。
今すべきなのはコイツなど無視してさっさと“消える”ことだ。
なのにどんどんヤツに意識が向くのがわかる。
駄目だ駄目だ。違うのに……!
「権利?まぁ、一応ないこともないかも」
「……何だと?」
「理事長だしね、僕。この学園のさ。親御さんから生徒を委託された立場からすれば、バカなまねしようとした子供(ガキ)にバカって言うくらいの権利はあるんじゃない?」
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