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お会計を済ませて、家に向う。
勝馬のおごりだった。
携帯を見ると、メールが入っていた。
夕子からだった。
カギをポストに入れて置いたと書いてあった。
だが、家の近くに来ると、明りをつけっぱなしにしたのか、部屋の電気がついていた。
留美は、もう少し勝馬と一緒にいたかった。
「留美ちゃんの部屋、まだいるみたいだね、友達が。」
勝馬がそう言うと、留美は嘘をついた。
「そうみたいですね。」
「もう少し家にいてもいいよ。」
勝馬がそう言うと、真人がおおはしゃぎした。
「やった!お姉ちゃんと遊ぶんだ!」
子供は正直だ。
動物もそうだが、本当に自分を大事にしてくれる人がわかるのだ。
留美は、真人のことも自分の事のように大事だった。
だからこそ、その思いが真人に伝わっているのだと思った。
「真人は本当に、留美ちゃんの事が好きなんだね。」
勝馬が笑顔でそう言うと、真人は留美の手をギュッと握り締めた。
「お姉ちゃんはね、真人の事が大好きなんだって。」
「そうか、そうか、よかったね。」
「それからね、パパの事も大好きなんだって。」
「そうか、それは嬉しいな。」
真人から伝える好きという言葉は、異性として好きというよりは、人として好きというニュアンスに聞こえる。
本当は異性として好きなのに、今はそれを言うことはないと思った。
異性として、勝馬を好きだという気持ちが伝わると、勝馬はきっと迷惑だと思うからだ。
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