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だから私は、案外学校が好きだ。
それは、人がいっぱい居るから。
すごく単純な理由で、学校を休まない。
授業は正直好きじゃないけど・・・
人ごみが嫌だという人もいるけど、私は人ごみが大好きだ。
だから、このアパートを選んだ。
「ちょっと、高いわね・・・」
「そうだね。でも、留美がここがいいっていうんだから、俺が出すよ。」
私が都会のアパートを選らんだばかりに、家賃は9万円も掛かっている。
でも、それぐらいしか、自分を主張する事は出来なかった。
何で都会のアパートなのか、両親は考えたり、訊ねたりはしてくれなかった。
とにかく、そうしてくれるなら、それでいいと私に言った。
都会のアパートなら、騒音がある。
騒音は、無音よりも安心するのだ。
そして、ぎらぎらに光るネオンを見ると、ほっとするのだ。
街が眠らないなら、安心できた。
夜になると、人は誰も寂しくなるように、私だって寂しくなる。
そんな時、街の明りが私を勇気付けてくれるのだ。
「お姉ちゃん、お帰り。」
隣の4歳の真人(マコト)は、留美の帰りをいつも待っている。
父親の勝馬(カツマ)は、夜8時過ぎにならないと帰ってこないからだ。
留美は、真人のために部活を辞めた。
そして、いつも早めに帰宅するようになったのだ。
真人の母親は、男を作っていなくなったらしい。
それがまだわからない真人は、いつか母親が帰ってきてくれると信じているのだ。
だから、留美に母の話をよくする。
そんな姿を見ると、留美は胸が痛む。
もう少し大人になれば、真人はきっと悲しむ事になるだろう。
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