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考えられるのは、指輪かピアスぐらいなのだが。
「その指輪でいいよ。こっちに投げて」
とりあえず、言われたとおり指輪を外して、桜に向かって投げる。
直接渡した方が早い気がするが、近づくなと言われているからできない。
とにかく今は、桜に縋るしか方法がないのだ。
だから、桜の言うとおりにするしかなかった。
桜は指輪をキャッチすると、左手に乗せて右手を翳した。
何をするのかわからないが、涼太はただ黙ってそれを見つめる。
桜は目を閉じると、集中しているのか一言も喋らず、指輪に手を翳したまま動かない。
十分か、十五分くらい経っただろうか。
ようやく桜は目を開け、小さく息をついた。
「はい、もういいよ」
渡した時と同じように、指輪を投げて返す。
返ってきた指輪をしげしげと見てみたが、特に変わったところもない。
見慣れた自分の指輪だ。
「……何をしたんだ?」
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