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この調子で彼女について語ると、僕ひとりだけのせいで熱帯雨林が消滅してしまうほど紙と文字を有するので、ここらへんで割愛させていただく。
それでもまだ聞きたいという人は改めて僕のもとへ来て欲しい。
二日程度眠れないのは覚悟してくれ。
そんな、なんの接点も持たないような僕と彼女だが、実は幼いころからの親しい仲である。
そこ、最後まで聞け。
いや嘘じゃないって。
彼女の方はどうか知らないが、僕は彼女と過ごした時間ならば、何年の何月何日、何時の出来事でさえ覚えている。
いやだから最後まで聞けって。
信じられないだろうけど、本当なんだ。
なんでそんな事が自信を持って言えるかというと、実はというと僕は日記をつけているのだが、彼女との出来事、もしくは彼女自身を綴るための冊子となってしまった。
だからその日記さえ見れば、いつ何が起こったか丸わかり、という訳さ。
八割方、見なくても覚えているのは内緒だ。
それ程にまで僕は彼女を愛している、とだけ認識していただければいい。
「なっちゃんは今日も、周りの女がブロッコリーにしか見えなくなるくらい可愛かったです……、と」
そんな彼女に親しみや愛や色んなの意味を込めて、僕は彼女のことを『なっちゃん』と呼ぶ。
ありきたりなあだ名であるにも関わらず、彼女のものだというだけでここまで完璧なものになるとは、今更とはいえ驚きを隠せない。
「なっちゃんへA4用紙、80枚分のラブレターを送りましたが、笑顔で焼却炉の中へ投げられた後、ぶたれました……、っと……」
そしてなっちゃんは侮蔑の意味を込めて僕のことを『ストーカー』と呼ぶ。
ただの変態のための単語が、彼女が呼ぶと、早朝の鳥のさえずりのように聞こえてくるから不思議だ。
「僕のどこが変態で、ストーカーなんだろ……。ただ人より一途ってだけなのになぁ。
ね、なっちゃん」
僕は部屋の壁一面に、隙間なく貼られたなっちゃんの写真に向かってにっこりと囁いた。
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