恋は盲目、僕はストーカー

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僕の部屋の壁という壁(天井含む)に貼られた大小様々な、 笑ったなっちゃん、 怒ったなっちゃん、 唇をかみ締めるなっちゃん、 少し困った顔をするなっちゃん、 自慢の運動神経を見せ付ける体操服姿のなっちゃん、 私服のなっちゃん、 なっちゃん、 なっちゃん、 なっちゃん、 なっちゃん、 なっちゃん、 なっちゃん、 がただ僕一点だけを見つめている気がして、なんだかとても暖かい気持ちになった。 いつからだろう。 僕の部屋に家族が入らなくなったのは。 『私さぁ、最近誰かにつけられてる気がすんだよねー』 僕の天使が、そう友達に漏らしたのを小耳にはさんだのは、つい先週のことだ。 それを聞いた僕は、地殻変動が起こるんじゃねぇかってぐらい震え、警察がきたら職務質問されるだろうってほど怒り狂った。 「んな訳がない! 僕以外の人間がなっちゃんに近づくなんて……、いや待てよ。 すべての生命の源とまで言われるなっちゃんだ……、僕以外の男が寄り付いてもおかしくない……! いや、今まで寄り付かなかったのがおかしいぐらいだ……!」 ボーイッシュというレベルを飛び級した、男勝りで基本喧嘩腰、もっというと暴力的ななっちゃんとはいえ、この世の美の集大成である彼女に発情するの、が雄の本能ってやつだ。 「しかしこの僕がそんな不埒な輩に気づかないとは……、なんたる不覚!」 実はというと、僕はずっと前から、なっちゃんを愛する気持ちと同時に、一人で下校している時や塾の帰り道などに変態に襲われたりしないだろうか、という心配する気持ちが膨らんでいた。 そういう訳で、1ヶ月程前から僕はなっちゃんのあとをつけている。 なっちゃんの安全を守る為に、彼女の背後に忍び寄り、無事を確認、家の前までなっちゃんの綺麗な背中を見守り続けるといった、ハードなスケジュールをこなしてきた。 これも愛のなせる業だ。 僕のテクニックのおかげで、バレるようなことは一度もなかった。 しかし、四六時中なっちゃんを尾行していたが、彼女の日常を脅かすような変態はいなかったはずだ……。 「くそっ……!」 僕は壁を殴る。 いきなり殴られた壁は「ちょ、なんすか」と言いたげだったが、関係ない。 僕が完璧だと思っていたパトロールも、まだまだツメが甘かったということだな……。
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