854人が本棚に入れています
本棚に追加
-ヤバイ、消ゴム忘れた。ありえねぇ、誰かに借りに行くか…。-
鞄をあさったり、周りをキョロキョロ見回していると、隣に座っていた子が声をかけてきた。
『何か忘れたんですか?予備がありますから、お貸ししますよ。』
『け、消ゴム。助かった。サンキュー!!…じゃなくて、ありがとう。』
彼女は「いえ、どういたしまして。」と言い、ノートや単語帳を見るのを再開した。
彼女にとってはごく普通のことをしただけだったのだろう。
しかし、どういたしましてと言ったときに見せた笑顔は天使だった。
たったそれだけだったのに彼女の周りが輝いて見えた。
-嘘だろ、この俺が一目惚れか?いや、こんな漫画でもありきたりな展開じゃあ俺は落ちねぇ。-
ワケの分からない言い訳を考えていたが、すぐ試験も始まり、頭から無理矢理おいやった。
試験も無事終わり、消ゴムを貸してくれた彼女に返そうと横を向くと、すでにいなかった。
どうやら、終了したと同時に出ていったようだ。
-どうせ、受かりさえすれば、会えるか。-
俺は、心残があるまま、帰っていった。
最初のコメントを投稿しよう!