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『それにしても、あなたも結婚できる歳になったのねぇ』
一瞬、頭が真っ白になった。
…結婚…ですか…
『なっ、急に何言うんだい。母さんっ。』
言われた本人よりあたふたしている父が、かなり面白い。
しばらく、頭の中でグルグルと瞑想していた。
『あら、私もれんくらいのときにはたくさん恋をしたものよ。』
『恋はいいわよ。あなたもたくさん恋しなさい。』
そう言うと、自称「たくさんの恋」の思い出にふけり始めた母は、にやけ顔になっている。
『でっ、でも、れんちゃんには早くないかい?』
父の話を聞いているのか、聞いていないのか、う~ん、そ~ねぇと上の空で返事をしている。
そういえば、恋なんて興味なかったなぁ。
そんなことを考えていると、父がなみだ目で真剣に聞いてきた。
『れんちゃん、まだ父さんを捨てないよね。結婚するならお父さん、とか言ってくれるよね。グスンッ』
その返事はせず、私は、「恋かぁ」と、ぼそっと呟いた。
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