854人が本棚に入れています
本棚に追加
肩に手を置いた。
そう思ったが、それと同時にれんがこっちを振り向いた。
「……」
『あの、時間になりましたので帰ります。』
『…え、あ、もう?』
行き場のなくした手を引きながら、慌てて返事をした。
告白寸前だったから声も裏返る。
『門限がありますので。今日はありがとうございました。』
れんはにっこり笑って深々と礼を言った。
さっきまで言おうと思っていたセリフはバッサリ切られてしまった。
『いいよ。俺こそ、ありがと。れんちゃんに付き合うつもりが、なんか俺が振り回しちゃったしね。』
-まぁいい。前よりはれんに近付けた気がするし。まだまだチャンスはこれからだ。-
…と、意気込んでいたのに、さすがれんちゃん。
『いえ。改めて、お友だちになれた気がします。できれば、一生友だちでいてくださいね。ニコッ』
-グサッ-
今、絶対に心臓にナイフが刺さった。
一生、友だちですか。
嬉しいんだか、悲しいんだか…。
やっぱりスタートに戻ったのか?
いや、一生って言われたからマイナスになった気がするかも…(泣)
そんな圭に気付かず、「どうかしましたか?」と呑気に聞いてくる。
でも…。
『一ノ瀬くん、良かったらですが、今度からお名前でお呼びしてもいいですか?仲良くなれたのにいつまでも名字だと寂しいですから…。』
唖然としていると、上目使いで「ダメですか」と聞いてくる。
『…全然。よ、呼んで下さい。むしろ呼び捨てでも。』
『では、…圭さん?』
『さんはやめて。せめて、くんでお願いします…。』
『圭…くん?』
『…は、はいっ。なぁに、れんちゃんっ。』
嬉しすぎて顔がニヤケ…いや、そんなんじゃおさまらん。
『ぅおぉぉぉぉ~』
圭はおもいっきり叫んだ。
-友だちもいぃんじゃないっ。-
「一生」も付いていたことは隅においやっているが…。
そして、れんの手を取って走り回った。
れんも始めは、驚いていたが、楽しくて笑いながら一緒に走った。
-こんなに笑ったのは初めてかも…-
見事なアメとムチ作戦でうまく、圭を振り回すれん。
圭は、れんに告白することが出来るのか!?
夕陽に見送られながら、二人は仲良く帰路についた。
最初のコメントを投稿しよう!