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圭は、結局、その日の放課後まで現れなかった。
いつもなら、昼の時間にも来て、なぜか私の玉子焼きを奪っていくのだが…。
『れんちゃん、まずは質問に答えてね。』
私は素直にうなづいた。
友達がいないせいか、することがなかったので勉強をしていたら自然に好きになっていた。
だから、今が授業っぽくて、なんだかワクワクしている。
いや、教えてもらうんだから授業のようなものか…。
『えっと、まずは好きなひとはいる?』
私は即答した。
『もちろん!!』
『えっ、だっ、誰!?恋なんて興味なかったんじゃないの!?』
圭がものすごい迫力で聞いてくるので、おどろいた。
お父さんとお母さんが好きだと言うつもりだったのだが…。
『あ、えっと、なかったですが。というか、父と母に恋が関係あるんですか?』
『……ごめん、ないです。』
なんだか、はずかしそうだ。
なにか勘違いさせてしまったようだ。
が、すぐ違う質問をまたしてきた。
『じゃあ、タイプは?どんな人が好きなの?』
タイプ…そうは言われても、何を基準に決めればいいのか。よく分からない。
しばらく黙っていると、圭が、分かったと言って、立ち上がった。
『まぁいいや。まずは、カップル見に行くか。明日は丁度、土曜だから行けるだろ。』
確かに特に予定がないので、うなづいた。
すると、「じゃあ…」と、いくつか決まりごとを言ってきた。
~~~~約束事項~~~~
一、オシャレしてくること。
一、言われたことには、なるべく従うこと。
一、明日は、カップルとして行動すること!!
最後の約束が重要なんだからな、と、なぜか、あたふたしながら言っていたが、まぁ、なにか意味があっての決まりなのだろう。気にせず、了解した。
何も考えていないれんとは逆に圭にはある思惑があった。そもそも、協力すると言い出したのもそのためである。
-これをチャンスに、れんに恋心を芽生えさせて、俺を意識してもらうんだ。-
なんとも中途半端な願いであったが、本人はいたって本気だ。
そして、その思いが学校中に広まっているのも事実だ。
知らないのは本人だけ。
そもそも、圭とれんの出会いは、この学校の入学試験だった。
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