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夜の街は森の夜とはまるで違っていた。
美しい何千もの灯が煌煌と闇を照らしていた。
ルサルカは街灯の下のベンチに腰を下ろし、息をついた。
今日見たものを思い浮かべる。
知識でしか知らなかった貨幣での取引。
何故、あんなものと物品が交換されるのかルサルカにはいまいちピンとこなかったが、取りあえず貨幣というものが街での暮らしに重要な要素だということは理解した。
仕事は結局見つからなかった。
引っ込み思案な性格が災いして、他人に積極的に話しかけられないのが一番の原因だろう。
寝る場所も、貨幣がなければ確保出来ない…。
ルサルカは大きな溜め息を吐き出した。
簡単にいくとは思っていなかったがこれからの事を思うと憂鬱な気分になった。
背中のキーボードを下ろそうと手を伸ばすと、ポケットががさりと鳴った。
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