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落ち葉を踏む音が辺りを包む。
真っ暗な森の中を少年はひたすら走っていた。
息が上がり、視界がふらつく。
その度に、背負う大きな荷物ががたがたと音を立てた。
四方八方を囲む緑が自分を阻む壁のように思え、少年の心を圧迫していた。
風が木々を揺する音に混じって……色々な言葉が浮き沈みする。
『あの方に近寄るなよ。災いをもらったら大変だ』
『神官様もお可哀想に。二度も子を還し、ようやく生まれた子が『不完全』とは』
『あの方の『真影の器』はなんの楽器でもないそうだよ。気味が悪いねぇ』
『もう一人生まれるとは限らんし……いくら『不完全』でも無下に殺せないのさ』
『村に何か起きたら神官様のせいだよ』
『奥様がご懐妊なされたぞ!』
『デーヴァ……』
『ええ、今度こそは必ず』
『決まっている。災いを根絶するのだ……。第二子の生まれ次第、殺せ』
「……っ!」
足が木の根に取られ地面に叩き付けられる。
少年はぐっと両腕に力を入れて起き上がり、静かに立ち上がるとまた歩きだした。
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