36人が本棚に入れています
本棚に追加
/187ページ
狭い路地を風のように走る。
雨が石畳を打ち、少年に降り注いだ。
ずきずきと疼痛が残る背中。
口の中にわだかまる血の匂い。
ルサルカは我を忘れて走る。
頭を恐怖が塗り潰す。
体力が底を付いても、気付かずに走る。
それは村を捨て、逃げたあの日と少し似ていた。
ふと、暗い道にぼんやりと明かりが見えた。
小さな一軒家、その中に昼間見知ったばかりの男の姿が窓から見えて、ルサルカは倒れこむように家の扉を開けた。
最初のコメントを投稿しよう!