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街の中央部にある真新しい家の前でプラプラしていると、そこから腹の出た中年男が現れた。
「おっ、来た来た」
どうやら、今回の依頼人らしい。
「おはようございます」
とディノは礼儀正しく挨拶をする。
そのミスマッチと言ったらない。
一瞬遅れて、ルサルカもペコリとお辞儀する。
「今回もよろしく頼むよ。おや、その子は?」
ああ、とディノは思い付いたようにルサルカを前に出す。
ルサルカは緊張で自分の身体が強張っているのを感じたが、どうしようもない。
「新しく臨時で雇ったんですよ。今日は一緒に仕事をします」
「よ、よろしくお願いします!」
中年男はおかしそうに笑ってルサルカに一枚の紙を手渡した。
「こちらこそよろしく頼むよ。庭の図面だ。この通りに仕上げてくれ」
「はい」
男はルサルカが緊張気味に受け取るのを見届けて、ディノに終わったら呼び鈴を鳴らしてくれと言い残し、家の中へ帰った。
「どれ、見せてみろ」
とディノはルサルカから図面を受け取りざま小声で呟く。
「あいつ、俺と同い年なんだ」
「えっ!?」
ルサルカは思わず叫んでディノと依頼人が消えたドアとを交互に見ていたが、ディノが笑い出すとつられて声を出して笑った。
ひとしきり笑って、ディノは大型のシャベルを二本出し、一本をルサルカに渡した。
「さあ、仕事を始めるぞ」
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