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春。
退屈な入学式を抜け出した。
座ってじっとしているなんて、僕の性には合わない。
しかし抜け出したといっても行くあてがある訳でも無いし、したいことがあった訳でも無い。
じゃぁ、僕は何故抜け出したんだ。
あのまま、体育館に並べられたパイプ椅子に座って先生にバレない様に携帯でも弄っていた方が、周囲の評価は下がらなかっただろう。
「はぁ……」
自然に出た溜め息。
僕の自分への呆れを篭めたその溜め息は、丁度顔の前に散ってきた桜の花びらをくるりと巻き上げ、そのまま空気に溶けて消えていった。
「花びら?」
ふと顔を上げてみると、そこには満開の桜並木。
「どこだ?ここ」
見覚えの無い場所。足で行ける範囲内にこのような場所があったのか。と、驚きながら桜並木を見遣る。
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