1人が本棚に入れています
本棚に追加
ひらひらと舞う花びらは、春の陽気の中で輝きながらくるくると回転し、落ちていく。
普段は活発で、落ち着きの無い僕だが、桜のどこかぼやけた、のんびりとしたところが好きだったりする。
「綺麗だなぁ……」
うっとりしながら桜を見上げていると、不意に突風が吹いた。
「うわっ!」
一陣の風は、桜の木から無理矢理花びらをむしり取り、大空へと投げ飛ばす。
ひらひらと大量の花びらが散る中で、
「ん?」
僕は、不思議な格好の少女に、出会った。
髪の毛は綺麗な桜色。
瞳はエメラルドグリーンで、肌は白磁の様に白い。
人形の様に整った顔立ちに、すらりとした手足。
360度何処から見ても、美少女と言える、少女だ。
美少女は微笑みながらこちらえと歩いてきた。
僕はその美しさに魅入っていて、少女がこちらに近づいているのに気がついたのは、手を伸ばせば、届いてしまう程に距離が縮まってからだった。
少女は小首を傾げて、
「坂東……祐司?」
僕の名前を、言った。
最初のコメントを投稿しよう!